レギオナルリーガ-。ブンデスリーガを頂点として数えれば4番目のリーグ。ザールブリュッケン-マンハイムの伝統的なダービーマッチが行われた。
この日、ザールブリュッケンのファンは開始から『19分03秒』までボイコットを行っていた。19分03秒というのはザールブリュッケンのクラブ創設年を意味する。ドイツ人は数字(クラブ統合などがある場合は最も古い数字をとる)を大事にするらしく、だいたいのクラブの正式名称はクラブ名+数字となる。
今回の19分03秒までの抗議の詳細は、試合前にウルトラスが配っていた会報誌に書かれていた。
『現在首位に立っている我々だが残念ながらクラブの会長はこの伝統あるクラブを誰かに売り渡そうとしている。それに対して我々は抗議の意を表し、19分03秒まで応援をボイコットする』
ダービーマッチでの応援ボイコットをすることがどれだけ屈辱的なことか、それと同じくらいクラブを身売りされる事が屈辱的であるという事を理解してもらうためのようだ。
後半開始直後、ザールブリュッケンのファンスタンドから『マンハイム、そして会長、お前らの首を掻っ切ってやる』と書かれた横断幕が掲出された。
メインスタンドに座っていたクラブ会長には多くのカメラが向けられ、その付近に座るファン達も口々に何かを言っている。
クラブ会長にはクラブを経営する権利と責任があり、ファンにはクラブをサポートする責任、そして想いを伝える権利がある。
この一見過激な横断幕に対しても警備員が飛んできて引き剥がしをするような光景は一切見なかった。この1ヶ月間さまざまな試合を観てきてこのようなシーンは多くあった。ザールブリュッケンに限らず、RBライプツィヒに対する抗議、他クラブの経営者に対する抗議など…。
『言論統制』が行われているシーンを見る事を一切見なかった。
抗議をする事が偉いとか、すごいとか、賞賛するわけではない。そして過激な横断幕を奨励するわけではない。
しかし、日本ではなぜクラブに対する抗議やファンの主張に対して、過敏すぎるほど『言論統制』を行うのか。
サッカーメディアも、媒体もファンの主張やクラブへの抗議などを取り上げる事がほとんどない。一方的にリーグやクラブがファンを罰する事だけに躍起になる。
『日本ではあの横断幕を出したら、ウルトラスは入場禁止処分を受ける』
『日本にはファンが主張する権利がないのか?良いものには良い、そして間違っているものにはノーと言うのが当然だ』
『今は成績が良いが、悪い時はファンから選手への叱咤がある。選手はそれに結果で応える、時にはぶつかる時もあるが、ヤツら(ウルトラス)は何か言っても次の試合ではサポートしてくれるし、今回のボイコットだってクラブとのケンカのようなものだ。ぶつかってわかり合う事もあるだろう。』
隣に座っている記者はそう答えた。
試合はダービーらしく乱入者が入ったりお互いのファンが小さな騒動を起こしたりと殺伐とした雰囲気であった。ダービーはダービーらしく、殺伐とした雰囲気が似合う。
4部リーグ、そして3,317人。”たった”これだけの人数でダービーらしい殺伐とした雰囲気を作り出せるこの国のフットボール文化は世界王者に相応しい。
日本がこの国と対等に戦うためには『フットボール』の本質、『フットボールは戦い』であるという原点を見つめ直すべきだ。
世界王者の4部リーグでカルチャーショックを受けて帰路についた。
1.FCザールブリュッケン/1.FC Saarbrücken
SVヴァルトホフマンハイム07/SV Waldhof Mannheim 07
その他/others
youtube
2015年3月31日/31.03.2015
スタジアム/stadium
ルートヴィヒスパルクシュタディオン/Ludwigsparkstadion
観客数/attendance
3,317人/3.317
試合結果/result
1.FCザールブリュッケン/1.FC Saarbrücken 0 – 0 SVヴァルトホフマンハイム07/SV Waldhof Mannheim 07
チケット/ticket
メディアパス/media pass