2019年8月18日 1.FCウニオンベルリン – ライプツィヒ
東ドイツ同士の戦い、とは言わないだろう。
歴史とポリシー、理念をしっかりと持つウニオンベルリンとドイツでバイエルンミュンヘンより嫌われる企業クラブライプツィヒ。
ウニオンベルリン記念すべき1.ブンデスリーガ初戦の相手にDFLが当てつけに選んだのはライプツィヒ。
2部での対戦時にウニオンベルリンはクラブを上げてホームでの試合で応援をボイコット、スタジアムは異常な雰囲気に包まれた。
未だに様々なクラブが存在を認めていないライプツィヒを最も嫌っているクラブの一つがウニオンである。
この試合の4日前、ウルトラのHPで声明が出された。
―我々にとって非常に重い決断である。先人が支え続けてきたこのクラブの晴れ舞台に我々のポリシーを試されるような対戦相手がだれかの力によって選択された。
開幕戦で最も注目されるカードである。多くの時間を費やして話し合った結果、我々は試合開始から15分間のボイコットを行うことにした。
これは簡単な決断ではないことは話し合いの時間の長さだけではないことを理解していただきたい。
このクラブが何十年も積み重ねてきた歴史、そしてこれから開かれる新たな栄光に向けてこれに協力してもらいたい。-
Jリーグ同様ネット上ではこの発表の後非常に大きな波紋を呼び、ウルトラへの賛否が多くつづられるようになった。
選手の中にはインスタグラムでコレオグラフィと試合開始からのサポートを依頼する異例の投稿をする者までいた。
だが、個人的な意見ではこれには賛成である。
ウニオンベルリンにとって1.ブンデスリーガの試合はこれから先長く続くであろう。
その中の1試合にフォーカスをあてて自らのポリシーを崩すべきではないと思う。
これが例えば15節に組まれた対戦カードであったら批判は出たのであろうか?私はそう思わない。開幕戦だから躍起になって批判する人間も出てくる、ただそれだけのことである。
このクラブの歴史、理念を理解するものであれば参加するであろう。
一方でクラブ側はこれについては静観を決めている。
クラブが用意したものは素敵なものである。
複雑な事情、悲しい事情でこの記念すべき試合に来ることのできなくなってしまったファンの顔写真を印刷したポスターを低価格で作製することが出来るファンサポートである。
22,012人の満員のスタンドはそれ以上のファンで膨れ上がるのである。
チケットは有料メンバー先行にて即完売、Viagogoなどのチケットサイトでは14.50€のバックスタンド席が200€超えで売られるなど物凄い注目度であった。
試合当日、いつも通り開始15分前にEisernet Liedが合唱され資本主義に買われポリシーをなくしたヘルタに向けた声が大きく響く。
それが終わるとDJの選手紹介が始まる。
DJから震える言葉が。
―今この時をみんなと過ごせることに感謝を。クラブに関わった全ての人々に感謝を。私たちにとってあまりに特別な日となるでしょう。
私たちの素晴らしい歴史を誇りに思い過ごしましょう。Eisern Union!
そしてクラブアンセムであるEisern Unionが始まったと同時に多くの顔写真入りのポスターが掲げられる。
私の目の前のおじさん二人も友人のポスターを掲げる、泣きながら。その隣では夫のポスターを掲げる妻と娘も同じように泣いている。
エモーショナルな光景だ。
クラブがファンとともに歩む、言葉で語るクラブは多いが実現できているクラブはどれほどあるのだろう。
少なくともベルリン1のフットボールクラブはそれが出来ている。
Eisern Unionが終わりもしないうちにレフェリーが試合開始の笛を吹く、それと同時に340度を埋め尽くしたウニオンファンが黙る。
わずかに聞こえるのは20度分を与えてもらった中でも一部のゲストファンが小さな声で歌っているだけである。
試合開始から14:50経過、カウントダウンが始まる。
そして15分になった瞬間、今までに感じたことのないような声量でチャントが始まる。
FC Union du wirst siegen, glaub an dich und es wird wahr,
die erste Bundesliga ist für uns nun endlich da,
die Zeit ist nun gekommen, ihr werdet es alle sehen,
der 1.FC Union wird nun endlich oben stehen.
この試合は勝ち負けが大切なのではない、この90分を無事に終えることが最も大切なことではないかとこの時悟った。
試合は0:4で圧倒されたが試合後のスタンドがそれを忘れさせてくれた。
この日の観衆は22,467人。定員は22,012人である。
クラブは455人のポスターに描かれたファンをカウント発表したのである。
心を揺さぶる事象である。これは後日大きな話題となった。
試合後、選手が場内一周する際には
FC Union Unsre Liebe
Unsre Mannschaft – Unser Stolz Unser Verein
Union Berlin, Union Berlin
とチャントが響き渡る。7名の新加入選手もこのチャントを感慨深い表情で聞いている。
勝利至上主義がはびこるこの世界で0:4で敗戦したクラブにここまで寄り添う行動ができるクラブはどれほどあるのだろう。
このチャントは選手がピッチから去ったあと10分間も続いた。
それをDJはずっと見守り続ける。
この大合唱が終わると同時にDJから挨拶が始まった。
―今日という日ここに携われた幸せをもう一度かみしめ、決して忘れないだろう。
我々にとってとても大きな挑戦であり、それに勇敢に立ち向かった選手、ファン、ウルトラに敬意を。
(ゲストブロックを指さして)お前たちには俺たちの価値は一生分からない!
それではみんなよい週末を!
最後の一言がこの試合のすべてであった。
1.FCウニオンベルリン/1.FC Union Berlin
ライプツィヒ/Leipzig
必要なし/F*CK RB
その他/others
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試合日時/date
2019年8月18日/18.08.2019
スタジアム/stadium
シュタディオン・アン・デア・アルテ・フォレステレイ/Stadion an der Alte Föresterei
観客数/attendance
22,467人/22,467
試合結果/result
1.FCウニオンベルリン/1.FC Union Berlin 0 – 4 ライプツィヒ/Leipzig
チケット/ticket
14.50ユーロ/14.50€