7シーズンぶりにベルリンダービーが帰ってきた。
しかも1.Bundesligaでのダービーは史上初である。チケットは即日完売、アウェーヘルタファン用の2,500枚のチケットは試合前日の金曜日の限られた時間のみで
当選者が直接受け取る方式がとられるほどの厳重警戒。
viagogoやebayなどのチケットサイトでは14.50ユーロのバックスタンドのチケットが200ユーロを超える高騰ぶり。
試合当日、スタジアム最寄りのクーペニックの駅には”Suche Karte”のプラカードを持ったベルリナーが大勢チケットを探している。
幸運にもチケットを手に入れることが出来たので個人的には8年ぶりのベルリンダービーを観戦することが出来た。
8年前はオリンピアシュタディオンでウニオンがヘルタをレジェンドトルシュテンマトゥーシュカの劇的なフリーキックで勝利を収めた。
あれから8年、この日も試合前からマトゥーシュカのチャントが歌われる。340度を埋めたウニオンファンの体はおそろいの青と白のリバーシブルジャケットを着たヘルタファンに向けられている。
試合前からスタジアムの雰囲気は最高だ。
アウェーブロックのフェンスに一つの手書きの横断幕が掲げられる。
“würde euer Mannschaft kämpfen wie IHR, dann wäre sie heute nicht hier!”
君たちのクラブがこのような努力をしてこなかったら、今日君たちはここにいないだろう!
という友好的な横断幕が見られる。
こんな友好的にダービーが進むはずもなく、これはただのフリであったのだ。
試合開始と同時にスタジアム全体でコレオグラフィが広げられる。
ウニオンは青と白に呪われたメデューサを倒す赤と白の勇者、古代ギリシャをモチーフにしたものだ。
ヘルタは…どこのクラブも行う発煙筒であった。
だがそれはとんでもない量の発煙筒、視界はいつもより激しく奪われ、発煙筒独特のにおいが充満した。
さらには発煙弾まで打ち込まれる。それはアウェー側のホーム席のファミリーゾーンにも、そしてウニオンの監督ウルスフィッシャーの手前2mやキーパーギキェヴィッツの真後ろにも、である。
DJからの再三の注意を無視するように何度も発煙筒が撃ち込まれる。たまらず後半には一時試合が中断することとなった。
ウニオンファンはブーイングを飛ばすだけで特に何もない、この段階では。
80分、ついに均衡が破られる。ゲントナーの飛び出しに思わずボヤタがファールをしてしまいPKの判定。VARでの確認も覆らなかった。
これを”エース”の一人ポルターがキーパーの腕をかすめゴール。
ウニオンの先制である。スタジアムが揺れるとはこのことなのだろうか。ビールやたばこ、グリューワインが数えきれないほど宙を舞う。
最高だ。
この震えるほどの感情の高ぶりを味わうのは久しぶりかもしれない。そう、昇格した5月27日以来だ。
このゴールの直後、ウニオンブロックのフェンスに大量の青白の布がかけられる。よく見られる光景だが、ここまでの量は正直見たことがない‥
ヘルタファンから奪い取った彼らのシンボルたちだ。Tシャツ、マフラー、スカーフ、バナー、フラッグ。
特に目を引いたのはヘルタのウルトラグループHarlekins Berlin 98’の横断幕である。
これは非常に挑発的かつ情熱的な行動であった。彼らの象徴を奪い取るとは素直に感心してしまう。
これに目を取られていたが、ふと気づくとヘルタファンが横断幕を片付け始めている。つまり試合終了が近い。彼らの前には2重のセキュリティの壁と端には数えきれないほどの警察官。
試合終了、1-0でウニオンの劇的勝利。
“Stadtmeister, Stadtmeister Berlins Nummer EINS!”
このチャントが歌われる。
もともとこの歌はヘルタファンの歌をもじったものだ。
8年前のダービー、ウニオンファンが入場するとともにヘルタファンは
“Scheisse Union, Scheisse Union, HERTHA BSC”
と同じリズムで歌った。
この試合の後からヘルタファンはこの歌を歌わなくなってしまった、その代わり永遠に聞く立場となったのだ。
下に動画を載せておく。
選手一周のあいさつ、ウニオンファンと選手はその歌とともに祝う。
一方のヘルタ側は、沈黙、怒り、謝罪。
ダービーとはこういうものだ。
クラブ、選手がこの試合がどれほどの意味を持つのか理解し、ファンはそれを理解してもらうまで訴えかける。
実際、前日のトレーニングに1500人のヘルタのウルトラを中心としたファンが練習場に集まり、トレーニング後に激励を行っている。
自分たちとは一生相いれない存在には負けてはいけないと訴えかけたのだ。
ここまで情熱的になれるフットボールは日本にもあるだろうか。ダービーは綺麗ごとではない。
ウニオンの選手がゴール裏でセレブレーションをしようとする中、ヘルタのファンブロックから信じられないものが撃ち込まれた。
改めてファミリーブロックに向けて何発もの発煙弾が撃ち込まれた。子供や女性に直撃している。
それだけでは飽き足りずピッチにも残った分の発煙弾を撃ち込む。
ウニオンのファンがウニオンのウルトラに向かって叫ぶ、やっちまえ、と。
それと同時にウニオンのウルトラ(覆面を被った黒ずくめの集団)が柵を乗り越えピッチへ。
しかし、これをキーパーのギキェヴィッツやフリードリヒなど数名の選手が制止する。
選手たちはウルトラの怒りを理解しながらも戻るよう説得した。結果的にはウルトラグループのリーダー1人がピッチに降り立ち選手とウルトラメンバーの間に入る形でセレブレーションに移らせた。
普段はおぞましいほどの雰囲気を出しているリーダーだがこのときばかりは非常にイケメンに見えた。
13年もリーダーをやっており選手、ファン、クラブをつなぐ存在だけあってみんなが言うことを聞く頼れる存在だ。
スタジアムにはいつまでもStadtmeisterを祝うチャントが響いていた。
1.FCウニオンベルリン/1.FC Union Berlin
ヘルタBSCベルリン/Hertha BSC Berlin
その他/others
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2019年11月2日/02.11.2019
スタジアム/stadium
シュタディオンアンデアアルテンフォレステレイ/Stadion an der alten Föresterei
観客数/attendance
22,012人/22,012
試合結果/result
1.FCウニオンベルリン/1.FC Union Berlin 1-0 ヘルタBSCベルリン/Hertha BSC Berlin
チケット/ticket
14.50ユーロ/14.50€