2015年3月28日アンドラ公国 – ボスニアヘルツェゴビナ Andorra – Bosnia and Herzegovina Andorra

フットボール/football




バルセロナからバスに揺られて3時間、ピレネー山脈に囲まれた小さな国アンドラを目指す。この国はフリーボート(いわゆる免税の国)であり、隣国スペイン、フランスをはじめとするヨーロッパの国々から多くの観光客が訪れる長閑な国である。 日本と同様に、桜がすでに満開を迎え、日中はTシャツだけで過ごすことができる。
 普段は長閑なこの国も今日ばかりは少し騒がしい。それもそのはず、今日はユーロ2016予選、アンドラ代表がブラジルワールドカップにも出場したボスニア・ヘルツェゴビナ代表(以下BIH)を迎える一戦が行われる。もちろんBIHのウルトラス”HARDCORE BOSNIANS”も600人が小国アンドラを訪れた。
 偶然にもバスで隣になった3人組の女性はノルウェーから来たボスニア人でBIH代表チームを応援に来たという。
 『BIHというと、ジェコ(マンチェスター・シティ)やベゴヴィッチ(ストーク)が有名だが、誰か贔屓の選手がいるのか?』
 『特にいない。BIHのユニフォームを着ている以上、BIHの勝利こそが最も重要。』
 BIHの勝利が最も重要であると何度も言われた。
 『選手はクラブ、チームの一員』
 ヨーロッパのファンは口を揃えてこう答える。
 BIHに限らず、選手個人のチャントはほとんど存在しない。クラブの象徴となる選手やエース級の選手には敬意を表しチャントが存在する場合があるが、試合中に歌われるのはクラブやチームを鼓舞するものがほとんどだ。日本とは文化的背景が異なるので当然であるが、同じフットボールでもサポートスタンスが国や地域によって異なるのは非常に興味深い。
さて、この日はBIHということもあり、日本人とわかるなり、
『ハリルホジッチ!』と連呼された。
『日本ではイヴィチャ・オシムも有名だよ』
と答えると、笑顔で喜んでくれる。たった一人の名前を呼んだだけで、笑顔で友達になれる。フットボールは世界共通の言語であると改めて実感した。
 しかし、この日アンドラを訪れたのはハリルホジッチでもオシムでもなく、首都アンドラ・ラ・ベリャにあるナショナル・エスタディで行われる試合をどうしても取材したかったのだ。小さな国がワールドカップに出場していた、そして数々のスター選手を抱える強豪相手にどのような試合をするのか、そしてスタジアムの雰囲気はどのようなものなのか-。興味は尽きない。
 バスターミナルで道を聞くと、どうやらスタジアムは移転していたようだ。事前の情報とは異なり、街中にほど近く移転していた。移転前のスタジアムは収容人数が1000人ほどであったが、現在は3300人に改修されたようだ。
 今ではこの規模のスタジアムでも国際試合が開催されているが、以前はFIFA並びにUEFAからの通達でアンドラ代表の国際試合はスペイン・バルセロナで行われていた。その通達が規模や収容人数が問題ではなく、指摘事項は芝生の管理・調整のみであったことが驚きだ。スタジアムが移転してからはその芝生の管理・調整ができるようになり、アンドラ代表の国際試合はこのスタジアムで行われている。UEFAやFIFAの基準では収容人数や規模は大きな問題ではなく、ピッチコンディションが最も重要であるという事を物語っている。
 昨年、Jリーグではスタジアム基準を理由にあるクラブのJ1昇格が阻まれた。この日のアンドラのスタジアムを見ていると、その措置は基準ではなく限りなく差別に近いものであると感じる。
 クラブとファンはそのスタジアムで昇格を目指して戦ってきた。確かに狭いし、古いという事実は隠す事はできないが、試合の数だけクラブやファンの想いが詰まっている。
 エスタディオナシオナル。国立競技場。
 アンドラ公国の人口は約8万人、首都のアンドラ・ラ・ベリャには約2万人が居住している。3000人規模の国立競技場があればおそらく事は足りるであろう。
 スタジアム横にある体育館に仮設のプレスルームが設置される。スタジアムはフットボール専用で、屋根付きのメインスタンドとサイドスタンドがあり、バックスタンドはない。バックスタンド側に選手ベンチが設置され、奥にはマンションがそびえ立つ。試合開始頃にはマンションのベランダに住人が集まる。ビールを片手に無料のフットボール観戦に興じる。
 アンドラファンからは散発的なコールが起きるが、表だった組織的な応援は存在しない。対するBIHは前述の通り、ウルトラスが600人押し寄せ、野太い声を響かせる。
 試合は下馬評通りBIHの快勝-。
 試合内容や結果は順当すぎておもしろくなかった。しかし、小国の小さなスタジアムでビッグトーナメントの予選が行われているギャップはとても興味深いものであった。
 おそらくアンドラが予選で勝利する事は難しいであろう。しかし、アンドラ国民はこのナショナル・エスタディでの試合がある限り、また訪れるであろうビッグトーナメントでは超一流の選手たちと対等に戦えるのだ。このスタジアム、そしてこの雰囲気はアンドラのオリジナリティだ。
 アンドラの関係者とボスニアの関係者が最後に握手を交わしていた。

アンドラ公国/Andorra

ボスニアヘルツェゴヴィナ/Bosnia and Herzegovina

その他/others

youtube

試合日時/date

2015年3月28日/28.03.2015

スタジアム/stadium

エスタディオナシオナル/Estadio Nacional

観客数/attendance

2,498人/2.498

試合結果/result
アンドラ公国/Andorra 0 – 3 ボスニアヘルツェゴヴィナ/Bosnia and Herzegovina
チケット/ticket

メディアパス/media pass